瞑想にまず必要なのは、正しい姿勢
瞑想をはじめて3年くらい経つけれど、最近になってようやくわかったことがある。それは瞑想において「姿勢」ほど重要なものはない、ということ。3年もかけてようやく気付いたのかよ、と思う方もいるかもしれないが、それは仕方ない。
瞑想において重要なのは、正しい姿勢とそれを維持する適切な筋肉です。これは誰がなんと言おうと間違いない。
ふつう瞑想といえば、精神的なものが注目されやすいと思う。「いかに集中するか」「いかに心を無にするか」「いかに変性意識に入るか」というような。もちろんそういうことも大切だとは思うけど、ちょっとメンタル部分が強調されすぎているんじゃないかと感じる。瞑想というのは、もちろん集中して無になる、ということではあるんだけど、その前に「長時間座る」という前提条件がある。まずこれができないと話にならない。そういう意味で、もっと瞑想のフィジカル的な技法(長時間座っていられるようになる技法)についてもっと語られてもいいんじゃないかと思う。簡単いえば、腰が曲がらず、苦しくならず、30分間きちんと座れるようになる方法。実は、これこそが瞑想の入り口なんじゃないかと思う。
瞑想にとってヨガがどのようにプラスに働くか?
僕の経験でいうと、瞑想を始めたばかりの頃は、瞑想をスタートして1,2分で腰が曲がってきた。典型的な猫背だったので、気を抜くとすぐに腰が曲がる。そういう状態で無理やり座り続ける。腰が痛くなる。壁に半分持たれて、むりやり背中をまっすぐにして座ろうとしたけれど、すぐに腰が曲がってくる。こんな調子だから10分くらいで断念してしまう。たぶんそういう人も多いんじゃないかと思う。
そんなときに、ひょんなことからヨガ(クンダリーニヨガ)を習いはじめた。ついでに気功についても別の先生から教わった。
ヨガから学んだのは、とにかく姿勢が大事だということだった。座骨からどう腰を立たせるか、背骨をどうカーブさせて座るのが正しいか、首の角度は、頭の位置は。。。実践的なアーサナや運動を通して、そういうことを教わった。さらにどの筋肉の緊張を抜き、どの筋肉を柔軟にしておくべきかということも学んだ。それは、ようは正しい姿勢(人間にとって自然で楽な姿勢)とはなにか、ということだった。
ただ習い始めの頃は、まったく意味が分からなかった。「横隔膜の緊張を抜く」と言われてもまずピンとこない。横隔膜なんてしゃっくりのとき以外に意識することなんてまずない。それに「腹の力を抜いて、下腹部(丹田部)だけに力をいれる」みたいなことも意味不明だった。腹は腹でしかなく、下腹部だけをコントロールするなんて無理だよと思っていた。やってみると分かるけど、結構難しい。下腹部に力をいれると、どうしても上の腹筋にも力が入ってしまう。
それでも数か月も続けているとだんだん要領が分かってきた。横隔膜の緊張も抜けてくるし、下腹部だけをコントロールすることもできるようになってくる。腰(背骨)も柔軟になってくる。するとみるみる姿勢が良くなっていった。人から「身長のびた?」とか聞かれるようになった。
それと同時に瞑想の時間がだんだん長くなっていった。はじめは10分くらいしか続かなかったが、30分以上続けられるようになった。しかも楽に続けられるのようになってきた。そこで初めて「なぜヨガでは、瞑想の前にかならずアーサナ(ポーズ)をやるか」というのが腑に落ちて理解できた。ヨガのアーサナをみっちりやって「身体づくり」をしておかないと、とてもじゃないけど長時間の瞑想なんてできない。
正しい姿勢で瞑想をすることの利点
長時間腰が曲がらず、姿勢を変えずに瞑想ができるようになると、圧倒的に瞑想の効率があがる。気功的にいうと、中脈を流れる気の循環がよくなるといくことになると思うが、それに関してはまだよくわからない。けれど明らかに「集中の質」が変わる。瞑想中に「身体からの悲鳴」がないのだから当然だ。腰が痛いとか、疲れたとか、凝ってきたとか、という感覚がなくなってきて、身体がずっと静謐な状態を維持できるようになる。そうなると頭(思考)も、余計な情報に反応する必要がなくなるのでどんどん静かになっていく。
世の中には、瞑想にチャレンジしようとしてなかなかできない人も多いのではないかと思う。そういう人は「雑念が多くて集中できない」みたいに思っている人も多いだろう。それに対して「雑念をいかに消すか」という思考技術的なアプローチを探すことが多い。でも実は、身体・フィジカル的問題が原因だったりもするのではないか。すべてそれだけで解決するとは思わないけれど、きちんとした「姿勢づくり・身体づくり」を行うことで、瞑想は格段にやりやすくなる。
そういう人には、やっぱりヨガがおすすめだと思う。別に街中にある健康体操的なハタヨガ教室で構わないと思う。どんなにファッショナブルでポップなヨガ教室でも、基本的な動きは学べる。とくに腰まわりの柔軟性と座るのに必要な筋肉はつくと思う。そうすれば確実に「正しい姿勢」に近づいてくると思う。
あらためて感じるが、やっぱりインドの伝統はすごい。こうした技術の蓄積と体系化に関しては、古代インドの人に頭が上がらない。